世界経済見通し 第2四半期

Research Institute, Aberdeen Standard Investments

※本稿は2019年6月20日に英国にてリリースされたレポート を元に7月19日に作成された日本語抄訳です。

アバディーン・スタンダード・インベストメンツ(以下ASI)は、景気低迷を示す経済指標の発表と政治情勢・政策運営の不透明感の高まりを受けて、グローバル成長予測を下方修正しました。その結果、当社の新規の見通しには世界経済の成長再加速の可能性は織り込まれておりません。また、世界のGDP成長率については2021年にかけて金融危機後の平均並み及びそれ以下で推移すると予想しています。

前回の世界経済見通しは3月に発表しましたが、その後の世界経済は明暗入り混じった展開となっています。前向きな見通しとしては、世界的に相対的な金融緩和が維持されており、特に中国では景気刺激策の一環として金融は緩和基調で推移しています。欧州では、企業業績に底打ち感が見られます。さらに、先進諸国の労働市場は依然堅調で、堅実な消費需要を下支えしています。

一方、米中貿易摩擦のさらなる拡大の可能性が第2四半期末まで懸念されました*。英国、イタリア、アルゼンチン、トルコ、イランの情勢はそれぞれ混迷の度を深めています。中国の景気刺激策が世界経済に波及効果をもたらしているという証拠は現状ほとんど見られません。世界の製造業の景況感は5月に6年半ぶりの低水準に落ち込みました。以上の状況から、私達は世界経済の成長の減速が続いていると判断しています。

世界経済の先行きを見通すうえで、貿易政策の急速な変化がとりわけ重要な(そして、予測困難な)要因となっています。米中貿易摩擦は、双方がレッドライン(越えてはならない一線)を引き上げるとともに、より強固な対決姿勢をとり続けたため、新たな報復関税合戦が不可避と思われる状況が続きました*。米国との対立によって、中国企業の最先端技術の開発や導入も影響を受けています。米国はメキシコからの不法移民の流入を阻止するために、メキシコからのすべての輸入に制裁関税を課すと圧力をかけました。ほかにも、米国は欧州やアジアから輸入される自動車に制裁関税を課すことを検討しています。

*その後、6月29日のG20大阪サミットにおける米中首脳会談で両国の貿易戦争は一時休戦。

私達は米中貿易摩擦の早期の解決は難しいと考えています。それは、すでに発動済みの制裁関税は据え置かれるうえ、二国間貿易協議が再開されても合意に至らなければ追加関税が導入されるリスクが残っているからです。米国内では、メキシコなど外国製自動車に対する恒久的な制裁関税発動を求める声が根強くあります。しかし、トランプ政権の場合、制裁関税は貿易交渉を有利に進めるための切り札として使われる公算が大きいと思われます。以上の点を勘案すると、政治情勢の不透明感の高まりで、経済、特に貿易や設備投資に、執拗で感情主導の政策の影響が長期に及ぶのは避けられないと見ています。

一方、足元のインフレ率が急反発する兆候は見られません。確かに多くの先進諸国では、失業率が低下していることから賃金が漸増傾向にあります。しかし、人件費増のコアインフレ率への「転嫁」は限定的となっています。米国、英国、ユーロ圏では逆にコアインフレ率は低下しています。私達は、インフレ率については、通貨とエネルギーのベース効果が足を引っ張る可能性を考慮に入れて、先進諸国では弱含みで推移し、新興諸国では下がると予想しています。

こうしたインフレ動向は金融政策に影響をもたらします。私達は、米国連邦準備制度理事会(FRB)が、経済成長の勢いの鈍化、弱いインフレ圧力、米中貿易戦争の不透明感を背景に、2019年中に2回利下げを行うと予想しています。マーケットは「年内最低2回の利下げ」をすでに織り込んでおり、FRBが利下げを実施しない場合は次の2つのシナリオのいずれかが現実になると想定されます。1つは、FRBがハト派色を弱める場合で、リスク資産に影響が及ばないようにするには貿易問題と景気の見通しの早期改善が必要になってきます。2つ目のシナリオは、FRBが市場の予想に反して利下げに踏み切らない場合で、金融市場は劇的にタイト化し、将来の政策調整はより大きなものにならざるをえなくなります。米国以外に目を向けると、ユーロ圏と英国については、前回までの「非常に緩やかなタイト化サイクル」の見通しを全面的に撤回しました。オーストラリア、ブラジル、ロシア、インド、それに中国については一層の金融緩和があると予想しています。

今回の見通しでは、世界のGDP成長予測について悪化ではなく概ね平均並みで推移すると予想しましたが、それは各国の今後の金融政策見通しを反映したものです。この見通しの上振れリスクは、金融と財政の双方における大幅な景気刺激策(中国による新たな景気刺激策を含む)が導入されるとともに、貿易摩擦に伴う緊張の急速な緩和が進み、世界経済が成長再加速局面に戻る場合です。

しかし、私達のベースライン予測では下振れリスク要因として「リスクの均衡」をはっきりと挙げています。経済成長見通しにとって最大の脅威は報復関税合戦の再燃です。ASIでは、市場が大幅な金融緩和を織り込み済みであることから、FRBが利下げを見送れば金融市場の壊滅的なタイト化は避けられず、金融危機以降続いてきた長期経済拡大基調に終止符が打たれると懸念しています。

global economic outlook

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