中小型株投資:リスクを理解する

Harry Nimmo, Head of Smaller Companies

中小型株プレミアムの説明で援用されるリスクとは何を意味するのでしょうか。また、大型株と中小型株の運用における、運用成果の違いを特徴づけるものは何でしょうか。

リスクとリターンは一枚のコインの表と裏のようなものです。中小型株への投資に伴うリスクが高い理由を説明する学術研究はこれまでも多くあり、こうした考察により、投資家がなぜより高いリターンを求めるかを説明することもできます。しかし一方で、大型株より中小型への投資のほうが低リスクとなるケースがあるにもかかわらず、こうした事象に関する研究は十分とはいえません。さらに、投資家は複数のリスクを比較するに際し、どちらかのリスクが大きい、小さいといった観点のみならず、特性がそもそも異なるという事実を理解する必要があります。上記の点を押さえておくことは、分散投資を理解する原点にもなります。投資家はさらに、企業規模を問わずすべての銘柄に共通するリスク・ファクターが存在することを見落としてはなりません。

一般に中小型株の企業価値が相対的に低く評価される理由として、以下の点が挙げられます。

  • 相対的にリスクが高い、 または
  • 規模自体が小さい(この尺度についてはさまざまな指標が考えられます)

リスクが高いほど企業価値が相対的に低く評価されるのはなぜでしょうか。投資家は、リスクが高い銘柄へ投資するに際し、将来のキャッシュ・フローを基に相対的に高いディスカウント・レート(割引率)で割引くこととなります。ディスカウント・レートが高いということは、投資対象のバリュエーションが低いことを意味します。言い換えると、売上高が同じ2つの企業がある場合、リスクが高い方の企業の時価総額は相対的に小さくなります。

実際、企業規模はどれほど企業価値の評価に影響するのでしょうか。スタンフォード大学経営大学院のジョナサン・バーク教授は、1997年Finacial Analysts Journal (53巻)に “Does Size Really Matter?” (仮題:「企業価値は規模とは無関係?」)と題する論文を寄稿していますi。これは中小型銘柄を時価総額以外の、例えば年間売上高といった特定のファクターの高低に応じていくつかの銘柄群を組成し、それぞれのパフォーマンスの相関性を検証した結果、株式投資のリターンは企業規模と相関性がないと結論づけられています。中小型銘柄の相対的なリスクの説明は、企業価値とリターンとの相関を説明する際の根本的なファクターにもつながります。こうしたリスク相関を理解することが、投資対象の価値を把握するうえで重要となってきます。

研究者たちは一般的に、小型株プレミアムについて、市場が厳しい状況でも中小型銘柄の株価低迷を受け入れる代償であると説明しています。アクティブ運用を行う投資家の場合は、そうしたリスクに対する代償が適切な水準にあるかを自ら判断しなければなりません。あるいは、そうしたリスクを管理する方法として、例えばポートフォリオに占める優良企業の比率を増やすことも考えられます。

小型株指数への投資は、同条件の大型株指数への投資より一般的にリスクは高まるが、中小型株に特化したアクティブ運用はその限りではない。

以上をまとめると、次のようになります。小型株指数への投資は、同条件にある大型株指数より一般的にはリスクが高くなる傾向にありますが、中小型株に特化したアクティブのポートフォリオ運用は、必ずしもその限りではないと言えるでしょう。

中小型株投資の高リスク要因

1.流動性リスク

一般に中小型株式の流動性は高くありません。さらに、創業者による持ち株比率が高い傾向にあり、市場で自由に取引される浮動株の比率は相応程度低くなります。こうしたリスクはポートフォリオに組み入れる銘柄を厳選することで軽減することが可能です。ただし、持ち高調整のための売買コストは相対的に高くなる可能性があることにも留意が必要です。

2. 景気後退期におけるリスク

過去の例をみると、中小型株式の株価は景気循環がピークからボトムへの後退期にアンダーパフォ ームする傾向が強まっています。米国市場では1980年から2017年の間に5回のリセッション(景気後退期)を経験していますが、米国の中小型株式がアンダーパフォームした期間の平均値はマイナス5%でしたii。それ以前では、世界大恐慌(1929~33年)及び第1次石油ショックによる深刻な不況(1973~75年)の際、厳しい相場環境が続きましたiii。いずれの場合も、中小型株式の投資家は大きな損失を被っています。

図: 米国小型株式パフォーマンス(対大型株式)と米国の景気後退期(1926-2017年)

Source: Professors Dimson, Marsh, Staunton and Evans, London Business School, CRSP, Morningstar, NBER

上記分析では、過去の景気後退期の開始から終焉までの年数が明確に把握できるかのように描出されていますが、実際には、景気後退期の開始時点とそれが認知されるまでの間には長いタイムラグがあります。また、一般的にはリセッション(景気後退期)とベア・マーケット(弱気相場)は明確に連動すると思われがちですが、投資の世界では投資家自らが弱気相場の始まりを慎重に見極める必要があります。さらに、経済的な景気後退(Economic Downturn)と市場環境の悪化(Market Downturn)が軌を一にして変移することもありません。英国で中小型株インデックスを算出するヌミス証券(Numis Securities)は、「英国の中小型株は、ベア・マーケットではアウトパフォーム、回復局面ではアンダーパフォームの傾向を強めてきた」という、どこか直感とは逆に思える調査報告ivを発表していますが、その理由については、景気後退と市況悪化の間のタイムラグの存在で説明がつくかもしれません。

図: 小型株はどのような景気局面で堅調なパフォーマンスを示すか?

市場環境別における小型株のパフォーマンス

Source: Scott Evans and Paul Marsh, Numis

3. クレジット・リスク

一般に資金調達コストは、中小企業のほうが高くなりますv (実際、株主資本コストも中小企業のほうが高くなっています。株式投資家から見ると、バリュエーションが低い企業の株式発行コストは高くなります)。このため、市場の下落局面、つまり景気後退期には、中小型株式の株価はアンダーパフォームするわけです。小型株プレミアムは、金利が高いときより低いとき、また金利の上昇局面より低下局面において水準が高くなる傾向が見られます。

4.インフレ・リスク

株式のバリュエーションは通常、インフレ率が目標水準に近づくほど高くなる一方、インフレ率が目標水準を上回る場合、あるいはゼロまたはマイナス(デフレ)になる場合は低くなる傾向が見られます。こうした傾向は、中小型株においてより顕著に表れます。そのことは、小型株プレミアムが、インフレ率が目標値に近いほど高くなり、一方で目標水準を下回る、もしくは上回る局面で低くなることを意味していますiv。

5.価格変動リスク

次に、中小型株指数が対大型株式でリターンのボラティリティが低くなる要因について、以下説明します。

中小型株式の低リスク要因

6.複雑性の違い

一般に大手企業の組織構造は中小企業に比べ複雑です。例えば、ソニーは20世紀後半に入ってトリ二トロン・カラーテレビとウォークマンの大ヒットで急成長し、1990年代には16万人を雇用する「巨獣」へと変貌していましたiii。巨大化によって利益が圧迫される状況が生まれると、ソニーは事業部門ごとに分社化を進め、各子会社には独自に収益源を確保することが求められました。ソニーのある子会社は1999年に同社初となるポータブル・デジタル・プレーヤーを米国ラスベガスでの展示会に出展しました。隣接するコーナーに展示された商品はソニー・グループ内の別の子会社が開発した競合商品でした。当然ながら、消費者は混乱し、両社の新商品販売戦略はいずれも失敗に終わりました。大手企業のこうした組織の複雑性は経営陣によるコントロールをより難しくしています。

7.指数組み入れ銘柄の集中

現在ある株価指数の構成銘柄の採用基準は過去の成功を反映したものです。特定のテーマが市場を独占することが時折ありますが、その場合指数の組み入れ上位銘柄はこうしたテーマの対象銘柄一色になりがちです。例えば2017年末時点を振り返ると、当時のMSCIワールド・インデックスの上位は米国のテクノロジー企業5社(アップル、マイクロソフト、グーグルの親会社であるアルファベット、アマゾン、フェイスブック)が占めました。これら5社の同指数の時価総額に占める割合は合わせて7.5%にも達しましたiv

指数における特定セクターへの集中現象は、地域別ポートフォリオ、さらには国別ポートフォリオにおいて、より顕著に見られました。例えば、MSCI韓国インデックスの28%はサムスン電子が占めましたvii。このように時価総額加重平均型の株価指数では、インデックス全体のパフォーマンスが小数の大型株銘柄によって歪められている可能性があります。

異なるリスク要因

8.通貨変動リスク

中小企業は売上の多くを国内市場に依存するのに対し、大手企業は多国籍企業として世界的に展開する傾向が見られます。例えば、MSCI米国インデックス構成銘柄の総売上高の63%が国内販売によるのに対し、MSCI 米国小型株インデックスでは78%に至っていますix。このことは、中小企業と大手企業では外国為替変動によって受ける影響が異なることを意味しています。

9. 銘柄固有リスク

銘柄固有リスクは、大型株と比較して中小型株投資において、運用成果により大きな影響をもたらします。対照的に大型株へ投資する際の運用成果は国、セクター及び消費者の生活様式の変化といったリスクにより大きく影響されます。

図: 総リスクに占める銘柄特有リスクの割合

Source: Axioma

 

10.異なる企業特性

中小型銘柄で構成されるポートフォリオは、大型株中心のポートフォリオとは構成銘柄が異なります。これは当然のように思えるかもしれませんが、近年注目が集まっているファクター投資(スマート・ベータ)では、同一銘柄がファクター投資の複数のサブ・ポートフォリオに組み込まれることがあります。例えば、iShares Edge MSCI USA Value Factor ETFに組み入れらている151銘柄のうち55銘柄は、iShares Edge MSCI USA Size Factor ETFにも組み入れられていますx。その重複は下図が示す通りです。

図: 指数における重複銘柄

Index overlap

Source: MSCI, iShares.

11.長期サイクルにおけるパフォーマンス

上述のように、中小型株式と大型株式では異なるリスク特性を内在することから、小型株プレミアムはプラス/マイナスのいずれにも発生し得る背景をご理解いただけると思います。小型株式と大型株式の上位銘柄が入れ替わるサイクルは国によって異なり、そのサイクルが完了するまでには数年がかかることがあります。

共通のリスク要因

.伝統的なリスク算定基準

運用担当者は、カントリー・リスク、セクター・リスク、それにインダストリー・リスクと対峙し続けなければなりません。さらに、ファクター別のリスク、例えば、クォリティ、モメンタム、バリューに関わるリスクを把握しなければなりません。特に重要なことは、銘柄特有のリスクを十分に把握することで、そのためにはファンダメンタルズ分析を通じ、リスクを理解することが最善の策と考えられます。

まとめとして、投資家の皆様には、中小型株投資に際し、特有の複雑なリスク要因を理解していただきたいと思います。これらのリスク全般の理解を通じ、アクティブ運用における優れた運用成果の実現に繋がるものと考えております。


i Jonathan B. Berk (Sept/Oct 1997), Does Size Really Matter?, Financial Analysts Journal.

ii E. Lecubarri et al., J.P.Morgan, 12/09/2017, The Case for SMid..

iii Professors Dimson, Marsh, Staunton and Evans, London Business School, CRSP, Morningstar, NBER (2018)

iv Scott Evans, Paul Marsh, Elroy Dimson (2018) Numis Smaller Companies Index 2018 Annual Review.

v Aberdeen Standard Investments, Bloomberg, 31/01/2018..

vi Gillian Tett (2015), The Silo Effect..

vii MSCI World Index factsheet, 02/2018.

viii MSCI Korea Index factsheet, 02/2018.

ix Worldscope/Factset (2018).

x iShares (2018).


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