$name

キーポイント

  • 投資家は世界経済の成長見通しをさらに注視しています。
  • 株式市場のばらつきが拡大する中、選別的アプローチが必要です。
  • 株式バリュエーションは特に米国以外の市場では妥当なレベルとなっています。
  • 2024年の株式市場では収益見通しの達成がカギとなると思われます。
  • 投資家は、経営基盤が強靭で持続的成長力があるクオリティの高い企業に注目すべきでしょう。
株式投資家にとって、2024年の世界のマクロ経済環境はより厳しいものになる可能性があります。それは、インフレ動向の不透明感、金利の天井感、経済成長率の鈍化のいずれもが2024年の企業収益には逆風となるからです。

abrdn(アバディーン)は、株式のクオリティを重視することこそがそうした環境を乗り切る最良の手段だと考えています。価格決定力、強力なバランスシート、高い競争優位性を持ち、景気循環に左右されにくい収益構造を備えた企業が逆風の中でも業績を伸ばせる好位置にあることは歴史が示しています。

さらに、強靭性と様々な経済環境により上手に適応する能力を備えている高クオリティ企業は、不確実性の高い状況では短期的にも長期的にも魅力的でしょう。

新しい市場環境の初期段階

多くの先進国及び新興国のインフレ率は、2023年当初よりは低いものの、中央銀行がインフレとの闘いで勝利宣言をする水準にはまだ戻っていません。

実際、主要国の多くのリスクフリーレートは現在も、リーマン・ショック後の世界金融危機からの15年間を象徴してきた「低成長・低インフレの世界」(the world of low numbers)とはかけ離れた水準になっており、投資家は2024年中の利下げを期待しています。

市場が現在の状況に至るまでの過程は順風満帆だったわけでありません。過去2年間には、金融市場の変動、投資スタイルの明確な変化、マクロ経済のクロスカレント(逆流現象)が錯綜しました。

そのほかにも、株式投資の先行きには、気候危機、地政学的対立、人口問題などの長期的課題が暗雲として立ち込めています。

2024年は、一方でリセッションの始まり、もう一方でインフレ抑制、そして経済活動の正常化といった、以前とは非常に異なるシナリオが織り込まれています。

シナリオの幅の広さから判断すると、投資家は企業のファンダメンタルズを重視すべきで、成果を上げる企業は買い、失望させる企業は売る、すなわち銘柄選択が成否の決め手になるでしょう。

2024年の主要シナリオ

主要な経済シナリオには、今後数か月間、投資家の最大の関心事となる世界的な成長鈍化およびインフレ率の低下が織り込まれています。

米国経済は回復力を維持することができるのか、それとも縮小期に入るのか(市場のコンセンサスは後者です)――。景気の方向性がはっきりすれば、一部の米国のテクノロジー銘柄を除き、2023年に株式にリスク回避の姿勢を見せてきた投資家のセンチメントもより明確になってくるはずです。

以前は世界の景気動向にかなりの同一性が見られましたが、今後はそうした同時進行の傾向が弱まり、経済成長、政策の方向性、特定セクターによる景気けん引については地域による偏りが大きくなる見通しです。

投資機会の特定

株式市場の2024年のスタートラインは国・地域によって異なります(図表1参照)。米国市場のバリュエーションは、テクノロジー銘柄を含む場合と除く場合のいずれにおいても、他の市場を上回っています。

図表1:株式バリュエーションの多様性は米国以外の市場の魅力を示唆

出所:Factset、ゴールドマン・サックス・グローバル・インベストメント・リサーチ、2023年11月

中国経済の回復が期待外れであったことは新興国市場に重くのしかかっていますが、新興国株式の先行きを考えると、銘柄選択次第では楽観の余地もあります。

中国の不動産部門が公的支援策で徐々に安定に向かい、消費者の信頼感が上昇する場合、楽観の余地が増す可能性も考えられます。加えて、他の市場に比べ魅力的なバリュエーションが追い風となり、2024年の中国株はリバウンドも期待できるでしょう。

中国を除く新興国では、中国との相関の低下が見られる中、これらの新興国経済の構造的な成長トレンドも長期的には魅力的です。

投資家にとって、構造変化が進行中の日本も注目に値します。近年のコーポレート・ガバナンス改革は市場でも肯定的に受け止められ、株主価値の一層の向上に資すると思われます。家計消費支出の増加と相まって、日本株はさらなる上昇が予想されます。

リスクには引き続き要注意

高まりを見せる地政学的緊張が近い将来に解消される兆しはほとんどありません。エネルギー価格の高騰が、インフレ圧力の再燃、企業業績の悪化を招く恐れも否定できません。

一方、「より高く、より長い(higher-for-longer)」金利水準と成長率の低下が、家計、企業、政府の財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

しばらくぶりに、中央銀行はより伝統的な金融政策(金利の引き下げ)を打ち出すものと見られます。

abrdnでは、各国の中央銀行が2024年中に利下げを行うと予想しており、問題のタイミングは、新興国が恐らく2024年前半、先進国が年後半になると見ています。利下げ時期がより明確になれば、投資家のセンチメントは株式や長期デュレーションの成長資産に向かうことになるでしょう。

市場は、悲観的というより楽観的

2024年はリセッション入りが懸念されていますが、株式市場はより良好な経済環境を織り込んでおり、注意すべき点がいくつかあります。

現在の株式バリュエーションは、近い将来に大きな変化があると見込んでおらず、同時に、2023年当初と比較しダウンサイド・リスクが高くなっていることを示唆しています。市場は2桁台前半の企業業績の伸び率を予想しており、それを下回る業績見通しが明らかになれば株価に影響が出ると思われます。

しかし、長期的に見ると、現在のバリュエーションの水準は高過ぎでも低過ぎでもありません。それは、グローバル株式のCAPE(景気循環調整後の株価収益率)レシオが歴史的レンジの中間点にとどまっていることからもわかります。CAPEレシオは、一時的な収益変動要因を除外して、10年間という長い期間の1株当たり利益を図る投資尺度です。

株価がCAPEレシオの歴史的範囲の中間点にある場合は、今後10年間の年換算リターンが8%になることを示唆しています。これは、米国10年債利回りを優に超える水準であるとともに、投資家が過去20年間に享受してきたグローバル株式の平均リターンと同じです。

しかし、短期的にはバリュエーションが市場の下支え要因になることはほとんどなく、2024年に市場の主要な変動要因となるのは企業業績です。

経営環境が厳しさを増すと予想される中で経営基盤の強靭性と持続的成長力を実証できる企業は比較的少数です。だからこそ、abrdnは2024年の株式市場ではクオリティを重視するアプローチがその真価を発揮すると確信しています。

まとめ

世界の経済成長が勢いを失いつつある中、2024年、すべての企業が好調であると期待しないことが賢明です。

2023年に好調だった企業が2024年も株式市場に活況をもたらすとは限りません。だからこそ、abrdnは、選別的であることが2024年の株式投資戦略において最も重要なポイントになると確信しています。

クオリティの高い企業を選び、その株式を長期的に保有することが株式リスクを軽減しつつ、持続的な成長を取り込む最良の方法と考えています。